ピサラ氏は、幼少の頃からフランスのクラシックな香水のコレクターとして、香りの世界に触れていた。また同時に、詩人である父の美しい作品に囲まれ、詩とアート、香りの融合を叶えるブランドを創りたいと考えた。そうして12年前にパリへ行き、父の詩を香りに投影し、幸福を感じた時間や自由であることをテーマに香りづくりを開始した。調香の専門学校には通わず、タイとフランスの専門家に学び、日々研究を続けている。現在、Dusitaのフレグランスは現在60か国で販売され、「The Fragrance Foundation Awards(FiFi Awards)」をはじめとする数々の賞を受賞している。
ブランド名の「Dusita / ドゥシタ」は、タイの信仰から生まれた古い言葉で、幸福が支配する天国の楽園を指す。詩を通じて世界へ平和と愛を伝え続けた父へ敬意を、そして天国へ行かなくてもこの世界で香りによって幸福を感じることができると考え、自ら描く水彩画と共に、香りのクリエーションをしているそうだ。水彩画は、想像のイメージもあれば、現実に感じた素晴らしい瞬間も反映され、ストーリーテリングの役割を果たしている。想像に限界はなく、バランスと融合が大事だと彼女は話した。
2024年3月29日(金)発売 新作
「ロザリン」(オードパルファム)
(15mL ¥9,900 / 50mL ¥22,000)
タイ語で「バラの女王」を意味し、ピサラ氏がバリのバガテル公園を訪れ、調香師になることを決意した記念的な日の想いが込められている。ローズの香りが他社ブランドにも多く存在するため、かなり苦労してクリエーションしたと言う。夢を追い求める旅をテーマに、バラの華やかなフローラルの側面と、グリーンでアーシーなニュアンスや、甘くフルーティでスパイシーな側面にも光を当て、多面的なバラの魅力を具現化した。また、「さよなら」の言葉を発したのちも、香りと愛情は遺り続けるという考えも投影されているそうだ。それは、詩人である父が亡くなった後も父への愛や父の詩、記憶は無くならないという想いが隠されている。
トップはスパイスを振りかけたブルガリアン・ローズ、熟したばかりのラズベリー、のどを潤すライチ、甘露のようなベルガモットのノート。ミドルは、グラース産のアイコニックなメイローズ、ソウルフルな下りるバター、濃厚なジャスミンサンバック、神秘的なインセンス、スモーキーなアミリスウッド、ムスキーなアンブレットという構成。ラストはパチョリやベチバー、サンダルウッド、バニラ、ココア、ベンゾインのスパイシーなウッディノートとなっている。
TOP:シナモン、ローズ(ブルガリア産)、ラスベリー、ライチ、ベルガモット
MID:ローズドゥメ、アイリスバター、ジャスミン サンバック、アミリス
BASE:パチョリ、ベチバー、サンダルウッド、バニラ、ココア、ベンゾイン
ここで、いくつかDusitaを代表する香りをご紹介。
「メロディ ドゥ アムール」(エキストレド パルファム)
(50mL ¥44,000)
愛をテーマにした香りで、美しいフローラルブーケの持つ明るさと、ピーチのフルーティさ、そして肌に広がるように計算されたシダーウッドのハーモニー。
TOP:ピーチ、エニシダ
MID:ガーデニア、ジャスミン、チュベローズ
BASE:ワイルドハニー、シダーウッド
「ムーンライト イン チェンマイ」(オードパルファム)
(15mL ¥9,900 / 50mL ¥22,000)夜中にチェンマイの山を登った時、月と熱帯雨林を感じた体験からインスピレーションを得た香り。光と影の二面性を表現しており、明るくフレッシュなユズで光を、パイナップルで月夜の影を描き出しているそう。
TOP:ナツメグ、ユズ
MID:ジャスミン、ベンゾイン
BASE:チークウッド、オークウッド、ベチバー
「ル パビリオン ドール」(オードパルファム)
(15mL ¥9,900 / 50mL ¥22,000)3つも賞を受賞しているこの香りは、何と村上春樹氏の本の世界からインスピレーションを得たとのこと。湖のほとり、イチジクの香り、雨に濡れた木の葉の、安らぎを感じる香り。どこかクラシカルにも感じた。
TOP:ベルガモットミント、ハニーサックル
MID:ボロニア、フランキンセンス、グリーンサクラ、ホワイトタイム
BASE:オークウッド、アイリス、バニラ、サンダルウッド、スピカータ
以下2種の香りは、YUKIRINのおすすめの香り。
「ラ ドゥサー ドゥ シアム」(オードパルファム)
(15mL ¥9,900 / 50mL ¥22,000)黄昏時を過ごす、優雅な女性の切ない美しさや、幻想的な夜が表現された香り。私自身この香りがとても好きで、タイという彼女のルーツが特に感じられる。壮大な夜と、揺れ動く感情のさざ波が、スパイスでより表現されているように思う。
TOP:フランジパニ、シャンパカ、バイオレットリーフ
MID:バニラ、ローズドゥメ、イランイラン
BASE:シナモン、アンバーグリス、チャルードパーク(タイ産)、サンダルウッド
「スプレンディリス」(オードパルファム)
(15mL ¥9,900 / 50mL ¥22,000)フルーティなオレンジやマンダリンの漂う、スミレとアイリスの香り。キャンドルの光に包まれて詩作に没頭する姿が想像されており、夜の帳の中で、静かに指先から情熱を発しているような静けさと優しさが感じられた。
TOP:サングインオレンジ、バイオレットリーフ、マンダリン(カブア産)
MID:アイリスバター、ワイルドハニー、ローズドゥメ、キャロットシードオイル
BASE:シダーウッド(バージニア産)、バーボンベチバー、バーボンバニラ
ところで、彼女はブランド創業者であり調香師でもあるが、SNSを通じてさまざまな国の香水ファンへ積極的にコンタクトをとっている。私自身も、彼女の来日が決まる前からSNSで交流があり、また香水ファンの開いたスペース(Xで可能なトーク機能)にも入室し、日本の香水ファンと積極的に会話をしていたので驚いたことがある。これほどフレンドリーな調香師も珍しい。彼女のファンファーストな精神は、世界中の香水ファンと繋がり、一緒にブランドを作り上げて、Dusitaを世界的ブランドにしたいという夢に由来する。香りのネーミングコンペを開催し、10万個のサンプルを使用して2200人がコンペに参加したという。実際にそのコンペで決まった香水のタイトルは、起用されている。自分の好きなブランドで、自分の考えた香水のタイトルが販売されるとは、ファンにとって夢のような企画ではないだろうか。上記の「スプレンディリス」はまさにコンペから生まれたタイトルだという。
新作「ロザリン」を始め、Dusitaの世界観、ピサラ氏の快活で情熱的な人柄を知ることができた。これまで50mLサイズでの販売のみだったが、この度15mLサイズが登場。非常に素敵なミニボトルとなっている。Dusitaが気になる人は、ぜひNOSE SHOP店頭にて試してみてほしい。
★NOSE SHOP 「Dusita」ページ
https://noseshop.jp/collections/dusita
【執筆者】
美容・香水ジャーナリスト YUKIRIN日本で唯一の香水ジャーナリストとして、メディアで香りの情報を発信。これまで2,200種類以上の香水や、500ブランド以上の化粧品に触れ、新製品や国内市場の動向を網羅するコンサルタント、ブランド顧問として活動中。香りブランドのプレス発表会登壇や、大手百貨店や商業施設で、肌の匂いと四体液説を組み合わせた 「香りのパーソナルカウンセリング」を実施。その他、コピーライティング、メディアリレーション、イベント企画、ウェブディレクション、動画ディレクション、インフルエンサーマーケティング、SNSコーディネート、広告用写真提供など、携わる業務の幅は広い。
https://ja.wikipedia.org/wiki/YUKIRIN
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★連載:FASHION SNAP「WEAR PERFUME」
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★連載:ウェブマガジンCheRish brun.「フレグランス短編小説集 魔法の香り手帖」
https://cherishweb.me/author/yukirin
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