
映画の中の香水 その2
2014/10/15 17:01
とにかく15年の空白を埋めようと必死に状況整理をする中、目に付いたものはクロエのオードパルファム。当然、彼女の26歳時には発売されていなかったものです。「えっと、これが今使っているものなのかしら…」といった風に、取り敢えず恐る恐るそれを吹き掛けてみる彼女。もちろん全く覚えのない香りがしたことでしょう。時間のギャップを表現するのにとても面白い表現だと思いました。クロエとその発売年を知っている人だけが気付けるギミック、ちょっとした楽しみだとも言えます。
この世は、意識したら突然現れ、気付く、というギミックで出来ています。量子物理学ですね。フランス映画には流石、それを遊べる捻くれた取っ掛かりが沢山仕掛けられています。その流れで一つ挙げると、口コミでも書かせて頂きましたが、「スチューデント(1988/仏)」が私の目に留まったものです。この作品では、ソフィー・マルソー演じる主人公が気になる男性の家に行くと、自分の使っているのと同じ香水が置いてあることに気付きます。そしてこのギミックは、香水にも小物使いにも興味がない方はまず、最初から最後まで全く注目しないものだと思うのです。
まず、主人公の部屋にニナリッチのニナ(旧タイプ)の瓶があることがきちんと映されています。そして彼の部屋で、別のサイズではありますがニナの瓶がまた登場します。それに気付いたら、話が層を持つのですね。つまり彼は、“流行に敏感な若い女の子を部屋に連れ込んでいるプレイボーイである”、ということ、そしてもう一つ、それを見た主人公は、≪自分と同じ香水を使っている女が出入りしているのね…≫などなど、あれこれと複雑な思いを巡らしているであろう、ということです。
私見ですが、どうもフランス映画を10本観ると、7、8本中には香水が何らかの形で出て来るように思います。大体バスタブ横や洗面台、鏡台などに置いてあり、香水瓶だと分かるけれどちょっと具体的に何かは分からない…、というケースが多いのですが、はっきりと映されたり、会話の中に登場したり、というのも結構多いのです。
最近の会話登場型では、フランソワ・オゾン監督の「危険なプロット(2012/仏)」。妖しい魅力を放つ男子高校生が、友人家族をモチーフにした挑発的な創作文を書いて、指導する男性教師を当惑させ翻弄する、という物語なのですが、その創作文の中で、親友の父親の愛用はディオールのオー・ソバージュ、母親の香りは“中流階級の女の香り”などと表現されているのです。
はっきり映される派としては、往年のフランスの国民的ポップスター、クロード・フランソワを描いた伝記映画「最後のマイ・ウェイ(2012/仏)」でも印象的なシーンがありました。彼は香水愛好家で、後に自分ブランドの香水をプロデュースするのですが、既製の香水を何種類か混ぜ合わせて好みの香りを作っていたようで、作中、イヴサンローランのリヴゴーシュ等、いくつかの香水を実験のようにどぼどぼと配合しているのが面白かったです。
凄いのは、思い出せる限り、フランス映画に出て来る香水はほとんど自国産のものだということです(先のニナリッチはイタリア人起業ですが…)。ゲランにシャネルにディオールに…。プライドを持つことについて何とも勉強になります。という流れで、別の国、例えばアメリカではどうでしょうか。
先の調合繋がりにもなりますが、ハーモニー・コリン監督作「スプリング・ブレイカーズ(2012/米)」では、羽目を外しにフロリダを訪れた女子大生4人組が現地で出会う、ジェームズ・フランコ演じる怪しいディーラーが、「自分はカルバンクラインのエスケープとCK-beを混ぜて自分の香りにしているのだ」というシーンがありました。確かに彼のルックスにはカルバンクラインが似合います。ちなみに、口コミに書かせて頂きましたが、「マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔(2010/米)」で、マイケルがカルバンクラインのエタニティと別のものを混ぜて身に纏っている姿が映されていたのを少し思い出しました。やはりアメリカ人にはアメリカのブランドが一番似合いそうです。
一方で、やはり年若い米国として、歴史ある欧州にコンプレックスを持つ一面もあるようで、シャネルやゲラン等はよく登場します。格調高さや知性、ステイタスレベルを表すものとして表現されるのです。
今思い出したところで、オフビートコメディの「ワンダー・ボーイズ(2000/米)」ではシャネルのクリスタルが、会話の中での些細な登場(すぐに伏線回収される程度のもの)ではありますが、面白い使われ方をしていました。詳しいネタバレは致しませんが、あの人もあの人も同じ香りなんだ、と思うと何かちょっとだけオフビートに面白いのです。
「バラ色の選択(1993/米)」では、マイケル・J・フォックス演じる一流ホテルマンが、香水売場で接客中のお目当ての同僚女性を口説く際、女性客を追い払う為に、口八丁手八丁でおだて、高級香水であるジャンパトゥのジョイを上手く勧めて買わせて帰らせる、という面白いシーンがあります。フランス産の歴史ある高級な香水はやはり自尊心をくすぐるものなのですね。格や箔の象徴ですから。
そういえば、同じバブル期の映画の「ワーキング・ガール(1988/米)」では、シガニー・ウィーヴァ―演じる猛烈キャリアウーマンが、シャリマーを愛好しているのを思い出しました。それはスノッブさであると同時にきっと、格付け社会を生きる為の鎧でもあるのです。
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