![Chapter.2 偶然にして必然の誕生秘話。リポソームの生みの親登場![@cosme NIPPON PROJECT]](https://cache-cdn.cosme.net/media/cur-contents/file/image/201709/d998c62296a893c1bac5b7476d156a14.png)



愛用者から「無くてはならない」といわれるコスメデコルテの名品「モイスチュア リポソーム」。この美容液をつくった人は誰かというと、コーセー研究所の元所長であり、「リポソームの生みの親」である、コーセー常務取締役・内藤昇さん。美容業界では内藤さんを知らない人はいないほど、リポソームのすべてを知り尽くすキーマンだ。


この美容液のカギとなるのは、言わずと知れた「リポソーム」の存在。「リポソームを一言でいうなら、多重層カプセルです。玉ねぎのように幾重に重り、層になったカプセル構造で美容成分を包み込み、じっくりゆっくり、肌の奥へ届ける仕組みになっています。医療分野ではリポソーム技術を応用した治療や技術開発がされていましたが、化粧品業界で応用しているところはなかったんですよね」と内藤さん。
そのリポソームの出合いはいつ? 「今思うと、ラッキーとしか言いようがないくらい偶然な出合いで…当時の僕の上司が渡してくれた資料にリポソームのことが書いてあったのです。彼は専門にしていたエネルギー代謝の源である、生物系の細胞内のひとつである「リボソーム(Ribosome)」の講習会へ行ったつもりが、実は「リポソーム(Liposome)」の講習会だったという(笑)。リポソームとは、細胞膜を形成している構造と非常に似ている極小カプセルのこと。彼の専門分野であるリボゾームとは全く異なる内容だったわけです。
帰ってきた上司が、自分には必要無いからとその資料を僕にくれたんです。読んでみると、これが実におもしろい内容で…(笑)。カプセルをふたつに割ると玉ねぎ状の層になっているでしょ?この不思議な物体に魅せられて、リポソームについて調べ始めました」。
元上司の勘違いがなければリポソームとの出合いがなかった…という、何とも偶然な話にびっくり!調べてみると、医療分野での研究が始まったばかりで、まだ化粧品分野で着手しているメーカーがないことを知る。「これはチャンスだと思いましたね。偶然の出合いだけど、医療にできて化粧品にできないなんてことは無い!と思っていたので」。意気揚々と研究に取り掛かろうとした内藤さんに、まさかの大誤算!高いハードルが立ち塞がりました。


「化粧品にはお客様への安心・安全保証というものがあります。商品化される前に厳しい品質チェックをクリアしなければならない。リポソームを化粧品として配合するためには、室温で3年経過しても安定に存在することが必須条件でした。
この条件をクリアするために、医療分野で活躍するリポソームの専門家に聞いてみたところ、『化粧品なんて絶対ムリですよ、無謀すぎる』と笑われる始末。なぜなら、リポソームは非常に繊細なカプセルで、ちょっとした衝撃でもカプセルの構造が崩れてしまうのです。3年どころか1年だってもたないと言われたのです」。
でも、内藤さんは諦めませんでした。「そんなに難しいのか(笑)、と思いましたが、ここで諦めてしまったら意味がない。何とかして安定した処方を生み出さなければと思っていました」。