「本当によくつくったなぁ、と思いますよ」と語るのは王子ネピアハウスホール開発センター副センター長の相馬治子さん。2008年からネピアの開発に携わり、鼻セレブを始め、マスク、ウェットティッシュ、キッチンタオルなどの商品開発を担当している。
「数ある商品の開発に携わってきましたが、鼻セレブは手直しする必要がないくらい完成度が高い商品なんです」。
ロングセラーと呼ばれる商品は、より良い原料や処方があると、少しずつマイナーチェンジするのが“当たり前”の時代。しかも日用品ともなれば、品質の“更新”はあってしかるべきことなのに…。鼻セレブは発売から10年以上が過ぎても、基本的な処方を変えていない、というのには正直、驚いた。
「そうなんです。鼻セレブのスゴいところは、最初の開発の段階で唯一無二の完璧な処方でき上がってしまったということ。手前味噌ですが、なかなかないですよね」。
その技術のスゴさ、少しだけ紹介しましょう。
ティッシュを始め紙の原料といえば、木材から繊維を取り出した「パルプ」になります。木材には大きく、針葉樹と広葉樹のふたつのタイプがあって、繊維の特性が異なります。鼻セレブはこの特性の違いを上手に採用したのです。
針葉樹の代表といえば松。太くて長い繊維が特徴です。反対に広葉樹は細くて繊細な繊維になります。“柔らかさ”を考慮すると、広葉樹のほうが適しているのですが、広葉樹100%でティッシュがつくられているかというと、答えは「NO」。
ティッシュには柔らかさも必要ですが、ある程度の「ハリ感」も必要なのです。ハリのある繊維は長くてからみやすいため、丈夫な紙ができ上がるというわけ。針葉樹と広葉樹の絶妙なバランスが必要なのです(相馬さん)。
鼻セレブの特長といえば「保湿力」。紙なのにしっとりと湿り気があるって、ものすごいことのように感じると思いますが、本来、木材は水分を溜め込むチカラを備えているんです。ですが、肌のことを考えると、パルプが持つ保水の力だけでは紙の柔らかさは得られません。
そこで考えたのが、“保湿力の高い美容成分をティッシュに染み込ませてみよう”と、鼻セレブ独自の保湿成分の開発をおこなったのです。採用したのは、<グリセリン><ソルビット><スクワラン>の3つの保湿成分でした。
<グリセリン>は空気中の水分を取り込む性質をもっています。ティッシュの柔らかさが保たれるのはこの成分のおかげといっても過言ではありません。
<ソルビット>は取り込んだ水分をティッシュの中に閉じ込めるキープ力があります。いつまでも乾燥しないという特性は、<グリセリン>と<ソルビット>の機能があってこそ。
<スクワラン>は化粧品などでも使われている“保湿効果”のある美容成分です。ティッシュに美容成分を入れられるのか、という懸念はありましたが、他のふたつの保湿成分、さらにはパルプとの相性も良く、保湿ティッシュの開発に成功したのです。
「肌にやさしいティッシュをつくりたい」というお客様のニーズから、紙や保湿成分にこだわってつくったティッシュですが、果たして本当に肌に良いのかどうか?
私たちは、感覚だけでなく、本当に肌に良いというデータを集めたのです。
保湿成分が配合されたティッシュ(鼻セレブ)と配合されていないティッシュを同じ条件のもとで置いておくと、ティッシュの重量に差がでました。保湿成分の入った鼻セレブは空気中の水分を取り込むため、重量が増えていたのです。
また、「こすれ」についても検証しました。
ティッシュで鼻をかむとティッシュと肌の間に摩擦が生じ、肌の角質層を傷つけてしまうことも。肌がダメージを受けると、肌内の水分が逃げやすくなってしまうんですよね。
一方で、保湿成分が配合された鼻セレブは肌当たりがやさしく、摩擦の影響も少ないという結果が出ています。
話を聞いていると、まるで化粧品をつくっているみたい。
「確かにそうですね(笑)。ティッシュは日用品の雑貨ですが、ティッシュひとつでも安心して使っていただけるようにという姿勢は、化粧品をつくっているのと同じ気持ちです」。保湿ティッシュが美容業界で注目される理由も何となくわかりますよね。
そうなると、究極のティッシュの製造工程が気になるところ。鼻セレブがつくられている王子ネピア 名古屋工場の製品部部長の橋本雅彦さんに、鼻セレブの製造工程について聞いてみました。
Q1: 究極のティッシュとなると、やはり鼻セレブの専用工場なのでしょうか?
A1: いいえ。鼻セレブ以外にもティッシュペーパーやトイレットペーパー、キッチンタオルといった家庭紙の生産をおこなっています。
Q2: 鼻セレブができるまでの工程を簡単に教えてください
A2: ティッシュやトイレットペーパーの主な製造工程は以下のとおり。
抄紙(しょうし)
紙を“すく”作業をおこないます。パルプを薄く伸ばすといったイメージですね。まだ、このタイミングでは保湿成分は添加されておりません。
巻き
薄くなった紙を機械にかけ、巻き取っていきます
↓
折り
↓
裁断
↓
箱詰め/フィルム包装(3個パックのみ)
↓
段ボール梱包
以上の流れになります。
鼻セレブはこの工程の中に、保湿成分が添加されるのですが、「どのタイミングで添加されるか」、気になりますよね。ティッシュのシートができ上がったあとに添加作業をおこないますが、その作業工程は社内でも限られた人しか知らず、企業秘密となっております。
Q3: 巨大なトイレットペーパーみたいな資源から何個の鼻セレブがつくられるのでしょうか?
A3: この巻き取りから約4,500個の鼻セレブBOXをつくることが可能です。