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クチコミ
夏は香水が楽しめない季節。そうとらえる人は意外に多い。デオドラント(制汗)がメインで、自分や他人の匂いに敏感になりがちなこと、そして、そんな汗ばむ体に強い香りを付けて暑苦しくなってはちょっと、という心のブレーキが働くせいもあるだろう。
それでも、そんな夏にこそ楽しみたい香りがあることを知っておきたい。その1つとしておすすめしたいのが、サンタ・マリア・ノヴェッラの「シチリア」だ。
サンタ・マリア・ノヴェッラは、800年の歴史をもつイタリア・フィレンツェにある世界最古の薬局。オーデ・コロンの本当の元祖である「王妃の水」を作ったことで有名だ。
そんなサンタ・マリア・ノヴェッラの香水は、薬局の前身である修道院の「慈愛と癒し」の思想に基づき、厳選した最高品質の原料にこだわり、天然栽培の草花や天然油脂を使うという姿勢を貫いていることで有名だ。ハーブや草花から、天然の薬草の効果・効能を最大限に引き出す研究をずっと続けており、まさに、アロマテラピーを最大限に生かしたプロダクツと言える。
つまり、香水としてのとらえ方が最初から異なるのだ。「香る水もメディシン(薬)である」という哲学で作られている。だから、厳しい季節である夏にこそ、身体や心に優しく語りかけてくれると言えるだろう。
そんなノヴェッラの「シチリア」は、公式サイトによると、「オレンジとマンダリンのエッセンスから生まれる爽やかでおおらかな香り」とある。他の方の口コミやネットの情報を見ても、似たような言葉が多い。だが、実際に使い続けると、この香りはとても複雑で、決してオレンジ一色ではないことがよく分かる。
トップ。苦みのきいたシトラスシャワー。ベルガモットの青みとレモンの酸味が、飛沫のようにはじける。ここまではよくあるシトラスのオープニングだ。
すぐにミドル。レモン系のシトラスが濃くなったという印象。それは、奥からハーブ香がじわりと主張してくるからだ。温かくややスパイシーなハーブが鼻をくすぐってきて、少しムズムズする感じ。これがレモンの香りとよくマッチしている。ジンジャーっぽいような温かみと痺れるような雰囲気が漂う。よくかぐと、レモンとラベンダーのシャープさとクッキングハーブの香りだ。とても明るく温かく、まさにシチリアの太陽を感じさせるミドル。コーラの風味に、生レモンをしぼって入れたようなテイストにも似ている。
やがて、ネロリっぽさが低いところで感じられてくるものの、シャープな薬っぽいハーブがずっと主張していて、何となく呼吸器系によさそうな雰囲気だ。この薬っぽさがサンタマリア・ノヴェッラの真骨頂であり、同時に、香水としてみると好き嫌いが分かれるところかもしれない。自分はとても心地よいアロマティックだと思う。さながら、レモンが減衰しても、そのはじけるような酸味と明るさを同じ高さで維持しようと、ラベンダーやプチグレン、ローズマリーなどのハーブが旋律を引き継いで高い音を奏でているようだ。
そして、ラスト。付けて1時間ぐらい。ハーブが消えかけて、下からほんのり甘い香りが立ち上ってくる。ベースはベンゾインのようだ。してみると、公式のマンダリンやビターオレンジというイメージよりもむしろ、ハーバル&ウッディなシトラスというイメージ。ほんのりシャープさを残しつつ、樹脂の柔らかな甘さをもって減衰していく。
特筆すべきは、お風呂上りなどでほんのり汗ばんだ肌につけても、レモン・ハーバルなスッキリした香りが、ほどよく香るということ。これなら、高温多湿な日本の夏に汗ばんだ肌にも、柔らかいグリーンな香りを与えてくれて心地いいと思う。もちろん香りの好き嫌いはあるだろうから要試香だけれど、ふだん夏には香水をあきらめがちな方にも是非一度試してもらいたい香りだ。
シチリア島は、地中海のほぼ中央、イタリアのブーツのつま先にある大きな島だ。乾いた大地にさんさんと太陽光が降り注ぎ、オリーブとワイン、フレッシュなオレンジやレモンが名産の風光明媚な島。まさに太陽の恵みの島と言っていいだろう。
「シチリア」もまた、太陽の恵みでできている。レモンとベルガモット、そして、苦みのきいたオレンジのシャワー。それらを「まばゆい光の香り」とするなら、ラベンダーやローズマリーなどのハーブは、そこに深い陰影を与えている「影の香り」だ。地中海の灼熱の太陽がもたらす光と影の香り、それがシチリアだ。
太陽の光が強いほど、影もまた濃くなる。シチリア移民はアメリカに渡り、幾多の栄光と、そして暗黒街の影の歴史をも作った。この光と影の香りのコントラストは、そんなことを暗喩しているかのようにも思えて興味深い。←こじつけがすごいな
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サンタ・マリア・ノヴェッラについて
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